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第15回断熱工事雑学講座

皆さんこんにちは!

上甲断熱工業、更新担当の中西です。

 

~変遷~

 

1|伝統の知恵:通風と蓄熱でしのぐ時代(〜1970年代)

日本の住まいは長らく温暖湿潤の気候に合わせ、

  • 高床・通風・深い庇で夏をしのぎ、

  • 土壁・漆喰・障子で“蓄湿・蓄熱”と放散を利用する設計が中心でした。
    いわば「でなく」の時代。材料は自然由来で、施工も地域大工の経験知が主役でした。


2|オイルショック後:断熱材の普及と量的拡大(1970〜1980年代)

省エネ意識の高まりとともに、**グラスウール・EPS(発泡スチロール)**などが住宅に本格導入。

  • **充填断熱(壁・天井)**が標準化

  • サッシは単板ガラス+アルミが主流で、開口部の熱損失は依然大きい

  • 防露は“なんとなく防湿シート”という時代で、気密の重要性は未成熟でした


3|標準化と気密の登場:品質の“均一化”へ(1990年代)

施工ムラによる結露・カビ問題が顕在化し、**気密施工(C値)**の概念が浸透。

  • 防湿層の連続性コンセントBOX周りの処理など、ディテールの標準が整備

  • 床断熱 vs 基礎断熱の選択が議論に

  • **Q値(熱損失係数)**で住宅性能を語り始める


4|“窓の革命”と外皮全体の最適化(2000年代)

開口部の性能が一気に向上。

  • Low-E複層ガラス・樹脂/複合サッシが普及し、開口部のU値が大幅改善

  • **外張り(外断熱)**が集合住宅・戸建てで拡大、**熱橋(ヒートブリッジ)**への意識が高まる

  • 吹込みセルロース硬質ウレタン現場発泡など、形状追従性の高い工法が登場


5|数値と実測の時代:UA・C・Ψで語る(2010年代)

評価手法が“感覚”から“計測×計算”へ。

  • **UA値(外皮平均熱貫流率)**で外皮全体を定量評価

  • C値(相当隙間面積)のブロワードア試験が現場品質の指標に

  • Ψ値(線熱貫流)や日射取得・遮蔽の設計も一般化

  • ZEH・パッシブ設計の広がりで、負荷低減→小さな設備の思想が定着


6|脱炭素と健康:性能+環境+ウェルビーイング(2020年代〜)

断熱は“光熱費対策”だけでなく、健康・生産性・脱炭素の中核へ。

  • 付加断熱(充填+外張り)で熱橋を徹底削減等温線を乱さないディテールが常識に

  • 木繊維・セルロース等の再生素材フェノール・VIP(真空断熱)・エアロゲルなど用途最適化が進む

  • BIM/解析で**結露リスク(温湿度・露点)**を事前検討、実測センサーで運用最適化

  • 改修市場が主戦場に。外壁カバー工法・屋根外断熱・内窓で住みながら断熱を引き上げる


7|材料の進化(ざっくり早見)

  • 無機繊維:グラスウール/ロックウール(コスパ・耐火・透湿)

  • 発泡系:EPS/XPS(安定・施工性)、硬質ウレタン(高断熱・現場発泡で気密寄与)、フェノール(薄く高性能)

  • 自然系:セルロース・木繊維(調湿・吸音・環境負荷低)

  • 先端系:VIP・エアロゲル(超高性能、納まりとコストが課題)


8|工法の進化(どれを、どこに)

  • 充填断熱:コスパ良/欠損・防湿の連続が品質カギ

  • 外張り(外断熱):熱橋に強い/防火・耐風圧・通気層の設計が要

  • 付加断熱:最強の外皮性能/納まり・コスト・厚みのバランス設計

  • 内窓・窓交換:改修の即効薬/気密・水密・見切りの丁寧さが肝


9|タイムラインで一気に把握 ⏱️

  • 〜1970s:通風・蓄熱・自然素材中心

  • 1980s:充填断熱の普及/省エネ意識の高まり

  • 1990s:**気密施工(C値)**と防湿ディテールの標準化

  • 2000s:高性能窓・外張り/熱橋対策

  • 2010s:UA・C・Ψでの数値化、ZEH・パッシブの普及

  • 2020s–:脱炭素×健康、改修主戦場、先端断熱材の実装


10|“今すぐ現場で効く”ミニ戦略 🧰

  1. 連続性ファースト:防湿層・気密層を平面→立体→貫通部で線としてつなぐ(コンセントBOX・梁受け・配管周りに赤丸)。

  2. 熱橋リスト:土台・胴差・金物・サッシ取付部…Ψ値が大きい箇所の標準納まりを図面化して全現場共有。

  3. 窓を先に決める:壁厚・断熱厚・付加断熱の有無を窓と一体で躯体貫通位置が後戻りコストの主因。

  4. 現場実測ブロワードア(C値)とサーモカメラで引渡し前チェック。欠損はその場で是正

  5. 湿気の道を描く:**sd値(透湿抵抗)**で内外材料の並びを確認し、内部結露の逃げ場を設計。

  6. 改修は“外から/窓から”:生活影響が小さく性能ゲインが大きい順に着手(内窓→屋根外断熱→外壁カバー)。


11|成果が見えるKPI(目安)📊

  • UA値[W/m²K]:地域区分に応じた目標を設定(新築と改修で別目標)

  • C値[cm²/m²]:新築で0.5以下を目安に、改修は1.0以下を狙う

  • 室内表面温度差[℃]:冬期の外壁・窓近傍で露点差を確保

  • 冷暖房負荷[MJ/年]:設計値と実測(スマートメータ)を比較

  • 結露/カビ発生ゼロ:アフター点検で窓台・北側壁・家具背面を重点チェック

ポイントは“他社比較”より、自社のベースラインを上げ続けること。設計値→施工→実測→是正のPDCAが最短ルートです。


12|これからの断熱工事:5つの潮流 🚀

  1. 改修メインの市場住みながら工事の工期短縮と粉じん対策が競争力に。

  2. 健康との接続:室温・湿度・CO₂・PM2.5の見える化最適制御

  3. 低炭素材料再生材・バイオ由来の採用とLCAの見える化

  4. 先端材の部分使い:VIP/エアロゲルを柱際・窓まわりの“効くところ”だけに。

  5. BIM×実測熱橋の自動抽出現場チェックリスト自動生成へ。


まとめ ✨

断熱工事は、
通風の知恵 → 量的普及 → 気密と標準化 → 窓の革命 → 数値と実測 → 脱炭素と健康
という階段を上がってきました。

これからの勝ち筋は、“連続性の設計”ד熱橋の抑え込み”ד実測で締める”
図面で描いた性能を現場で実現し、暮らしで証明する——その一貫性が、住まいの快適と地球の未来を同時に高めます。🏠🌿

 

 


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